リモートワークで大きな仕事を成し遂げるには
ということが書かれた本を読みました。
なんだか最近、本をもらったとか読んだとかしか書いておらず、技術者のブログとは思えない感じがして鬱です。
吉羽さんがTwitterで絶賛していたのをFacebookで見て面白そうだなーと思って買って読みました。

- 作者: スコット・バークン,依田卓巳
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2015/02/18
- メディア: 単行本
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マイクロソフトであのインターネットエクスプローラーのプログラムマネージャーをやっていたスコット・バークンが、ワードプレスドットコムで著名なオートマチックにチームリーダーとして入社し、そこで見て聴いて感じた内容を本にまとめたものです。
オートマチックは最近増えてきているほぼ完全にリモートワークの会社*2で、著者が入社するまではチームというものもなく、チームリーダーというものもなかったとのこと。そこへ創業者*3のマット・マレンウェッグがスコットに声をかけ、半ば実験的にチーム制を導入し、リーダーをやらせてみたという話。
著者は『伽藍とバザール』*4を引き合いに出しながら、オートマチックのようなリモートベースでOSSのように開発するスタイルを「バザール」的とし、一方でマイクロソフトのように計画をもとに大きなものをつくり上げるスタイルを「伽藍」的とし、バザール的なスピード感と伽藍的な緻密さを融合しようと試みる。*5この試みが上手く行ったかどうかは、最後まで読み進めればわかる。彼のチームが成し遂げた成果はワードプレスを使っている人なら誰でも知っている「アレ」なので、おおっ、と思うでしょう。
この本は吉羽さんもブログで書いているように名言の宝庫。僕も読んでいて刺さったページを折りながら読んだんだけど、折り目だらけになってしまった。
その中からごく一部だけ引用しておきます。結構吉羽さんとかぶると思うけど。。
毎年、新しい仕事の方法が次々と流行するが、試してもほとんどの企業では上手く行かない。そういう方法はしばしば「革命」と称えられ、その時時の有名企業とひとくくりにされることが多い。カジュアルフライデーや、ブレインストーミング、リーン生産方式、シックスシグマ、アジャイル開発手法、マトリクス型組織、さらには20%ルールなど...
どれほど素晴らしいテクニックも、愚かな社員を賢くすることは出来ないし、疑心暗鬼の職場にどんな方法を導入しても、社員が同僚や上司を魔法のように信頼しだしたりはしないのだ。
テクニックが全て「論理」の産物であるのに対して、文化は「感情」に根ざしているからだ。文化をきちんと評価するスキルを持っている人はごく少数だ。それを「変える」スキルの持ち主となると、たとえやって見る勇気はあったとしても、さらに少ない。
実際にスコットはやってみせたんだなあ、というのが本を読むとわかる。
イノベーションについて語る会社の初歩的な間違いは、「実験」の基準を高く設定することだ。それではアイディアを試すことすら難しくなる。優れたアイディアを悪いアイディアから選り分けるのにどれほど多くの実験が必要なのかを理解していないからだ。
人は一対一で話しかけた時には別人になる。これがわかれば人生における成功の秘訣をひとつ手に入れたようなものだ。(中略)会議で全てが決定されると考えるのは愚か者だけだ。(中略)大勢の同僚が集まった会議室で演説をして、全員を説得できる人などまずいない。
あらゆる測定は誘惑を生む。(中略)データが物事を決めてくれるわけではない。データを注意深くとらえれば物事がはっきり見えるようになるが、それは決定ではない。(中略)社内の文化があまりにデータ信奉に傾くと、すぐれた直感を持つ社員は去っていく。(中略)すばらしいものを作るには直感と論理の両方が必要であり、どちらかが突出するのは良くない。
デザインをスッキリさせるためには、大局的な思考が必要であり、ひとつひとつのアイディアが優れているかどうかより、全体としてのサービスがユーザーにどう適合するかを考えなければならない。ワードプレスのバザール型の文化には様々な強みがあるが、ユーザー体験には使いやすさと明確さが欠けていた。それは本来、伽藍型の建築家が得意とするところなのだ。
仕事に関する最も危険な思い込みは、深刻で無意味なものでなければならないというものだ。それ自体無価値でつらいものだからこそ報酬を支払われる、と私達は信じている。(中略)金は地位を与えてくれるが、地位が意味を与えてくれるとは限らない。
データ主導の思考は危ない(中略)「富」は一般的に蓄えた金の量で測ることができるが、「意味」に似たような計測方法はない。意味は個人によって違う。人生に唯一無二の意味はなく、人によってさまざまに異なる意味があるだけだ。意味、情熱、魂といった感情的な言葉は、人生はすべて純粋理性的なことだけで決まると考える人に恐怖をもたらす。(中略)
仕事に意味があり、労働者が仕事自体に大きな自由と誇りを感じるというのは、新しい考えでも過激な考えでもない。むしろこういう考えは仕事の起源に根ざしている。私達は単に道に迷っただけなのだ。
著者のスコット・バークンって聞いたことある名前だなあと思ったら、『アート・オブ・プロジェクトマネジメント』の人だった。この人といい、ジョエル・スポルスキーといい、マイクロソフトのプログラムマネージャー出身の人の書く本は面白い。NTのカトラーについて書かれた『闘うプログラマー』も熱い本だったし、マイクロソフトはすごかったんだなあと思いますね。
そして、オライリーさんはなぜこの本を訳さなかったのかな。。今までのスコットの本はオライリーさんから出てたのにね。

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