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マイクロソフトに行ってきた

写真はレドモンドにあるマイクロソフト本社の31番ビルディング

去年の話になりますが、11月にMicrosoftにてDevOps関連のSE*1を集めたミートアップ兼トレーニングイベントがあるから、GitHubからも何人か選抜して参加してみてよ、というオファーがMSからあったようで、私もAPACの代表として選抜されて行ってきました。ちなみにGitHubからは全部で10名のSEが参加しましたが、MSからは総勢50名ほどでした。MS内でもかなり絞って人を選抜していたようです。ちなみにMS Japanからも一名いらしていました。

内容については細かいことはここでは書けないんだけど、逆にそんなに秘密にするようなこともなくて、世界各国に散らばるAzureDevOpsのSE代表に対して最新機能の紹介と、AzureDevOpsを売る際のノウハウを共有するみたいな場でした。我々GitHubは特別ゲストとして招かれた格好で、特段AzureDevOpsを売るように言われているわけではないです。

MicrosoftはDevOpsに関しては現在一生懸命キャッチアップしているところという印象がありました。ただ流石にエンタープライズに強いだけあって、AzureDevOpsという製品は、権限周りやADとの連携などエンタープライズでは求められる機能への目配せはされている印象ですね。製品としては悪くないので、Azureを中心に据えるような構成を考えているのであれば良い選択肢ではないでしょうか。Repoの出来は正直良くないので、そこはGitHubにしたほうがいいとは思うけど。これはポジショントークと取られてもしょうがないけど、そうではなくて、イチ開発者としてマジにそう思います。

セッションの中では、世界各国のSEが実際に現場で苦労していることを直接そのセッションを担当しているプロダクトマネージャー(が多かった)に対してフィードバックするケースが多く、非常に勉強になったのも事実です。この分野ではMicrosoftさんはまだまだ新参なので、非常に苦労しているようですが、参加している人たちはみな前向きで、いい印象を受けました。

参加者の中にはXamarinでNat*2と一緒にMSに参加した人もいて、MSはすごくいい会社だよ、と強調していたのも印象に残りました。確かに、10年前まであった非常にEvilな印象というのはだいぶ薄れてきたのかなーとは感じます。実際そのイベントに集まっていた人たちは、選抜された人たちということもあるでしょうが、非常に頭がよく前向きでまたいい意味で従来のMSとは印象が違う人が多かったように思います。

思えば、Herokuもあのセールスフォースに買収されてずいぶん経つけれどもサービスとしてのHerokuがなにか劇的に変わったということはなく、でもゆるくセールスフォースファミリーの一員であるという事実があるなあと。Herokuはアイディアをすぐ形にしてデプロイできるプラットフォームとして、当初は何かを作り出したい個人や、スタートアップをメイン顧客に発展していたわけですが、大企業であるセールスフォースに買収されたあとも変にエンタープライズっぽくなることなく、うまく運営しているなと思います。GitHubMicrosoftもそんな関係になるんじゃないかなと思っています。

GitHubもHerokuも、Google Apps (G Suite) やSlack, そしてもちろんAWSなどのその他様々なSaaS, PaaS, IaaSは皆2005〜2009年位の間に一斉に世に出てきて、スタートアップやアーリーアダプター(日本だとWeb系企業とか)が取り入れて成長していったわけだけど、そんなアーリーアダプターたちも10年経ってみんなそれなりの規模のエンタープライズになっているわけで。段々と、これらイケてるツールを作っていた僕らも、使っていたみなさんも年を取り、社会に対して負う責任も大きくなり、小さなスタートアップだった会社も何千人、何万人と抱える大企業になってきたこの10年。だんだん製品に求められる機能だったり、会社/業界に必要な人材だったりというのも様変わりしてきたのかなということを感じます。

かつて、IBMやオラクル、SAP、MS(!?)といったプロプライエタリな企業が業界を引っ張っていた時代があって、それを支えていたエンジニアたちがいた時代が80年から90年代だったとすると、GitHubやHeroku, Slackみたいなツールは2000年代から登場した比較的新しいツールで、新しいコンセプトで社会や企業のあり方を大きく変えてきたわけですが、かつての世代がその後下の世代から見て、あらゆる角度で硬直していったかのように見えたのと同じように、僕ら2000年代の世代も気づかずにそういう扱いになるのでは、みたいなことを最近感じることがあります。

Microsoftは社内でYammer*3やTeamsといった自社製ソーシャルメディアチックなツールを使っているわけですが、MSの規模でこれらのツールを全社規模で運用しているというのがすごい。MSはグローバルで何万人と社員がいるわけですが、全員Teamsでルックアップして、メッセージのやり取りができるというのはちょっと衝撃的でもありました。「うちは1万人近くいる大企業だからこういうツールはなじまないんだ」みたいなことを言う方は洋の東西を問わずいらっしゃいますが、MSができるんだから、取り組んだほうがいいのでは、とも思います。

ただ、MSの規模だと、Slackみたいなゆるいツール(そこがいいのですが)では管理しきれないのも納得できて、この規模で効果的に運用して、ソーシャルメディア的なパワー(社員がみな自律的にコラボレーションするパワー的な?)を引き出すには、ちょっと違う次元の機能が必要なんだなということがよくわかりました。

GitHubも私が入社した300人足らずの頃と今とでは規模が違うわけで、段々今までとは違うレベルの悩みがでてくるだろうし、会社の文化も作っていかないと行けないんだろうなということを感じます。同世代の企業たちも、Slackを始めとして今年続々IPOするという噂が流れています。また足元ではそもそもこのシリコンバレーバブルがそろそろ弾けるんじゃないか感が感じられる昨今です。そろそろ次のフェーズなのかもしれません。

今日のブログは特にオチはないですがこのへんで。

シアトルに行ったので、アーロンとエビちゃんに会ってきました。ブラジル料理を食べましたが、美味しかったです。アーロンは翌日に日本語検定試験を受けるとかで、若干ナーバスになってたようでしたが、付き合ってくれてありがとう。

*1:Solutions Engineerの略で、他社だとセールスエンジニアと呼んだり、AWSだとSolutions Architectとか呼んだりする職種です(MSでは呼び名は様々あって一様ではない)

*2:Nat Friedmanは元XamarinのCEOで、今年からGitHubの新しいCEOになりました

*3:YammerもMSに買収されていたことをみんな覚えているだろうか